Ehrsson, H. H., Holmes, N. P., & Passingham, R. E. (2005). Touching a rubber hand: feeling of body ownership is associated with activity in multisensory brain areas.

Ehrssonによって、self touch illusion (STI)をはじめて報告された2005年の論文。STIは、本文では、「somatic rubber hand illusion」と命名されている。

  • 実験
    • STIの条件
      • 左手が触る側の手(administrating hand)、右手が触られる側の手(receptive hand)。左手の動きは、実験者の手によって直接にガイドされる。
      • ラバーハンドが身体中央、右手(receptive hand)の位置から15cm左の位置に置かれる。
      • 刺激時間は60秒 or 30秒。
      • 接触に関与する指とrubber handにプラスチック製の手術用の手袋(plastic surgical glove)を装着。
    • ドリフトの計測
      • 刺激付与後、rubber handを取り除き、目をつぶったままの状態で、左手(administrating hand)の人差し指を直線的に動かし(brisk movement)、右手の人差し指があると感じる場所を報告。
      • したがって、receptive handのドリフトのみを計測。
    • STIを感じている際の脳の活動を記録。
  • STI時の脳活動
    • 腹側運動前野(ventral premotor region)、頭頂間溝(intraparietal sulcus, IPS)、小脳(cerebellum)、それぞれの両極で有意な活動が見られる。
      • 運動前野で活動している場所は、左右の下中心前溝(right/left inferior part of the precentral sulcus)
    • 特に、同期的な刺激において活動が高まるのが、腹側運動前野(ventor premotor cortex)の両極、左の頭頂間溝(left intraparietal cortex)、内側・右の小脳(medial and right cerebellum)。
    • このうち、錯覚の強度と正の相関を持つ場所が、左右の腹側運動前野(下中心前溝)・左右の小脳。
  • 腹側運動前野に関するDiscussion(p7-)
    • 腹側運動前野について知られている、複数感覚の統合に関する基本的な知見
      • 腹側運動前野は視覚(visual)・触覚(tactile)・体性感覚(proprioceptive)からの入力を受け取り、解剖学的に、より第二次体性感覚野(the secondary somatosensory cortex)や下頭頂皮質(the inferior parietal cortex, area 7b)へと接続している。
      • 運動前野のニューロンは、手が何かに触れたとき、あるいは手の近くに視覚刺激を認めたときに発火する。
      • 運動前野のニューロンは、「手の位置」をコードしている。 -> Lloyd2003: 右手を交差させた状態でFMRIによるスキャニング。目を閉じているとき、右脳の腹側頭頂間溝(ventral intraparietal sulcus, VIP)が活性化。目を開けると、左脳の腹側頭頂間溝、左脳の運動前野(premotor)、内側頭頂間溝(medial intraparietal sulcus, MIP)、左の角界(angular gyri)縁上回(supramarginal gyri)の接合点が活性化。つまり、premotorは、「視覚を介した位置情報」の把握に関連。
      • 運動前野の視覚受容野は、「手の位置」からの情報を参照している。これにより、手の位置が動いたときに、受容野も手の空間へと追従する。これらの細胞は、身体中心座標系(a body-centered reference grame)にける手の近傍空間を表象している。
    • 運動前野のSTIにおける役割
      • 実験で得られた運動前野の活動は、(peripersonal spaceにおける外的物体の表象ではなく)おそらく、手に関する複数の情報(触覚・体性感覚・視覚)が整合的であることの検出に向けられている。
      • この種の複数の感覚の統合に関係した運動前野の活動は、アンケートにおける錯覚の強さとの相関が示唆するように、 身体所有感(feeling of body ownership)と関係しているかもしれない。
    • 運動前野の側方性
      • 腹側運動前野の活動は、右脳でより広域的。
      • この違いは、身体表象における右半球の優位性を反映しているか。
  • 小脳に関する議論
    • 小脳とRHI
      • 小脳外側部(lateral cerebellum)とRHIの錯覚の強度には有意な相関が見られる。
      • 小脳の各部(lobules VI and crus I)は、橋核(pontine nuclei)を通して、運動前野と頭頂葉からの入力を受け、歯状核(dentate nuclei)と腹外側視床(ventrolateral thalamus)を通じて、もとの領野に情報を送り返すことで、小脳半球は、触覚・体性感覚・視覚表現を統合し、感覚信号の分析に対して一定の役割を果たす。
    • 小脳の「時間のずれに対する分析」
      • 特に、小脳は、感覚信号と運動信号のタイミングの分析に重要な役割を果たすことが知られている。
      • タイミングのずれを分析することで、「自己に由来した感覚信号」か「外部由来の感覚信号」かを区別することができる。
      • Blakemore(1998, 2001)の仕事によると、小脳の活動は、「一方の手の動きと(それに連動して他方の手に与えられる)触覚刺激が非同期的であるときに強まる。」
      • しかし、この実験では、二つの身体部分からの触覚刺激が時間的に相関しているときに、小脳は強い反応を示す。(この点の不一致は興味深い。)
  • 頭頂間皮質に関する議論
    • RHIとの関係
      • RHIの生成時、頭頂間皮質(intraparietal cortex)に沿った場所に活動がみられる(Ehrsson2004)。
    • STIとの関係
      • 頭頂間皮質(intraparietal cortex)は、視覚野・体性感覚野・運動前野とつながっており、手から得られる視覚・触覚・体性感覚の情報を統合する。
      • サルのarea5では、左右の手からの触覚信号を受け取る細胞が多く存在する。
      • 本実験で得られた頭頂間溝の活動は、運動前野と小脳と共に働きながら、左右の手から得られた触覚と体性感覚の情報を統合するたくさんの神経細胞によるものであろう。
      • この部位が、身体所有感の保持に関係するかどうかは不明。

トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2013-12-24 (火) 22:49:44 (1424d)