Formatted Citation

  • Caspar, E. A., Cleeremans, A., & Haggard, P. (2015). The relationship between human agency and embodiment. Consciousness and Cognition, 33, 226–236. doi:10.1016/j.concog.2015.01.007

Access

Personal Summary

  • 行為一般に対して、自己主体感(SoA:sense of agency)と身体所有感(body ownership)がどのようなかたちで関与しているのかを調べた実験。

指標

  • 自己主体感は、キーボードを押してから音がなるまでの時間間隔がが実際の間隔と比べてどれだけ短くなったか(temporal binding)によって計測されている(自己主体感が強いほど、temporal bindingの効果も強くなる)。
  • 身体所有感は、proprioceptive driftによって計測(自己の身体の固有感覚が、ロボットハンドの位置にどれだけ近づくか)

実験条件

  • ロボットハンドが(机の下に隠れた)被験者の右手と同期してキーボードを叩くKalckert and Ehrssonのパラダイムを適用した実験。active congruent(自分で叩く・指も一致)・active incongruent(自分で叩く・指が不一致)・passive congruent(実験者に指をガイドされる・指は一致)・control(ロボットハンドなしで、自分の手で叩く)の4種類の条件。

実験結果

  • temporal bindingの効果はpassive congruent << active incongruent << active congruent ≒ control
  • proprioceptive driftの効果は、active incongruent(ほとんどなし) << passive congruent << active congruent
  • 身体形態の変形した状態を媒介とする「actionーevent」系列の発生は、body ownershipを(ほとんど)伴わないが、しかし、sense of agencyには一定の効果が確認できる。
  • 受動的な動作生成による「actionーevent」系列の発生でも、body ownershipへの効果が確認できる一方、sense of agencyへの関与は確認できない。

考察

  • ロボットハンドが介在しても(active congruent)しなくても(control)、temporal bindingのレベルにほとんど差がないことから、行為の直接性が失われることによっても(適切な身体表象が担保されていれば)、sense of agencyは減少しないことがわかった。
  • sense of agencyには、external agencyとbody agencyの二つの要素があり、身体的形態に矛盾が含まれているような確率的な関連性であっても、一定のsense of agencyが生成される。
  • activeな条件では、身体形態が一致する条件でbody ownershipが高まり、それとともにsense of agencyも高くなっている。この意味で、body ownershipは、能動的に行為に関与するような条件では、行為に対する主体感を高める、と解釈することができる。
  • passiveな条件では、(一般的なRHIが正にそうであるように)body ownershipの関与が認められるものの、sense of agencyは低調である。この意味で、body ownershipは、sense of agencyとは(少なくとも部分的には)独立なプロセスであると考えられる。

Contents

Abstract(全訳意訳)

  • 人間は、日常的に、行為とそれによって生じた結果が極端に間接的であるような関係に対して、主体的な感覚(SoA:sense of agency)を感じる。我々は、intentional bindingの指標を使って、ロボットハンドを使って、行為と結果の間に中間物が介在するような条件によって、SoAにどのような影響を与えるかを検討した。ロボットハンドは、被験者の指の動きに合わせて、同一の動きを生成するか(active congruent)あるいは、一致しない指で類似の動きを生成する(active incongruent)。Bindingの効果は、active incongruentの条件で有意に減少することから、身体表象が変換されることでSoAに影響が及ぶことを示唆している。一方で、ロボットハンドが矛盾のない動きで介在する場合(active congruent)と、そもそも介在しない場合でbindingの効果に大きな違いはない。この結果は、身体的な行為に対して中間物が介在するような条件が、SoAを減退させるわけではないことを示している。我々は、人間の持つ自己主体感が発現するにあたって、意図と恣意的な結果とを結ぶ確率的な関連性に加え、結果を達成するのに動員される感覚運動系において効果器の(視覚的?)マッチングが関与していると考える。

General Discussion(全訳意訳)

  • 本研究の結果が示唆するには、ロボットハンドを通じた介在的なactionは、自身の身体のみが関わるタイプのactionと比べて、必ずしもSoAのレベルに影響を与えるものではないということである(実験1)。しかしながら、仮に、被験者が、自発的な動作指令と矛盾するような動きをする手を見るような場合(本研究では、異なった指へと動きが伝搬される)、SoAは減少する(実験1・2・3)。興味深いことに、実験1と実験3で見られたように、この減退したSoAは、受動条件(passive congruent condition)と比べて、より強い水準を維持していた。この点は、形態が視覚的に矛盾(visual incongruency)するだけでは、行為の主体であるという感覚を完全に破壊することはできないことを示唆している。 加えて、我々の結果は、外的なeventを達成するうえでのsensorimotorによる関与は、人のSoAの効果に一定の役割を果たしているということを示している。言い換えると、人間のSoAは二つの要素からなっているようだ。第一に、意図と結果の間が単に統計的に結ばれるような偶発性(contingency)(これは、動物に有効な道具的条件付けの理論から裏付けられる)。第二の要素は、自発的動作指令における効果器に限定された(身体的?)内容と、結果を生み出す(直接的な?)手段として関わる効果器との適切なマッチングである(The second component is an appropriate match between the effector-specific content of the voluntary motor command, and the effector involved as the means of producing the outcome appears to be contributed. )。すなわち、人のSoAは、イベント間の統計的な関連性のみならず、感覚運動系のコントロールの詳細に対して参照を行っている、ということである。
  • 被験者が自分自身の手を動かす際、agencyとownerhipは簡単に分離できるものではない(Marcel, 2003; Synofzik, Vosgerau, & Newen, 2008; Tsakiris, Schütz-Bosbach, & Gallagher, 2007)。それにもかかわらず、幾つかの研究は、これらの関係を明らかにしようとしてきた。「additive model」は、agencyを、body ownershipに対して意図的あるいは目的志向的な運動表現を付加したものとして捉えようとするものである。「independence model」は、agencyとbody ownershipを異なる経験として捉える。通常の自発的な感覚体験において、これら二つは共起するのが通常である。いくつかの行動学研究(e.g. Kalckert & Ehrsson, 2012, 2014; Sato & Yasuda, 2005; Tsakiris et al., 2006) と脳画像研究 (Tsakiris et al., 2010) は、この独立モデルを支持している。そして、本研究は、関連性のある新しい情報を提供している。実験2では、変換されたembodimentの条件下ではSoAの効果は見られず、additiveモデルと整合的である。一方、実験1と3では、部分的な効果が確認されており、independenceモデルに一致する。我々は、効果器に限定した運動情報に関する視覚表象が、部分的にSoAに貢献していると結論する。現段階の証拠を基にすると、厳格な意味で適用するならば、additivityモデルもindependenceモデルも正しくないように思える。将来の研究では、agencyとownershipの体験のうちどの成分がadditiveで、どの成分がindependentが、より詳細に記述できるようになることが望ましい。
  • agencyの計測として、explicitな指標 (e.g. Daprati, Wriessnegger, & Lacquaniti, 2007; Tsakiris et al., 2007; Sato & Yasuda, 2005; Wegner and Wheatley, 1999) とimplicitな指標 (e.g. Haggard et al., 2002) が使われてきた。しかしながら、それらは、agencyの異なる側面を計測している可能性がある (Ebert and Wegner, 2010; Synofzik et al., 2008) 。 本研究では、(actionとeventの間の)時間間隔の推定値を計測することで、intentional bindingを主な指標として採用している。まず第一に、intentional bindingがagencyを計測する信頼性の高い指標であることを支持する強力な証拠が存在する (for a review see Moore & Obhi, 2012)。第二に、implicit な指標は、explicitな指標と比べて、課題にかかる要求や期待(task demands and expectations)による影響がより少ない。第三に、これは最も重要なことだが、アンケートを通して条件間の違いについてexplicitな計測値を得たときに、intentional bindingの指標でも同様の条件間で違いが得られるという共通了解が得られていた。実際、実験3では、実験条件間でみられたintentional bindingのレベルの違いは、(establishされたアンケートの尺度によって明らかになったように)RHIの経験に関する特定の項目において、同様の違いを繰り返した。とりわけ、implicitな判定もexplicitな判定も、ロボットの手が被験者の手と形態的に一致しないで動いた場合に、agencyの経験を伴うことを部分的に示した。興味深いことに、embodimentに対するexplicitな判定と、proprioceptive driftに基づくbody ownershipに対するimplicitな計測は、agencyの経験に関する形態の一致/不一致の因子の影響を矛盾なく指摘するものである。
  • 我々を取り巻く環境の変化に関する主体感である「external agency」と、身体に基づいた主体感である「body agency」との違いは、 Kalckert and Ehrsson (2012) によって最近になって議論されている。素朴に予期できる点として、身体に基づく主体感は、外的イベントに起因する主体感と比べて、身体所有感と密接に結びついている。とりわけ、RHIにおける所有感と主体感に関するスコアは、active congruent conditionにおいてのみ正の相関を示しているが、条件がincongruent(形態不一致)あるいはpassive(実験者に指を動かされる)のケースでは、十分な相関を示さない。加えて、主体感は、手が自分自身の体だと知覚されたときに、より高いスコアを示している。我々のアンケートの結果は、おおよそ、 Kalckert and Ehrssonによる結果と重なっている。
  • そのうえで、なお、body agencyとexternal agencyの境界は、多くの道具立てに基づく研究が示しているように、不透明である。脳は成熟すると、機械のような、全く新しい外的オブジェクトのうえでのagencyを学習するようになるのと全く同じように、進化のある過程で、脳は身体に基づく主体感を学習しなければならなかった。身体主体感は、脳の視点からみると、非常に身近な外的オブジェクトのうえでのagencyであると、単に言えるかもしれない。
  • 技術革新の歴史は、人間の主体感の柔軟性を証明するのに十分すぎるほどの材料を提供する。人間の心は、道具を使って目標を達成させ、さらに抽象的で恣意的な機械を使って世界に働きかける驚異的な能力を発展させていった。逆に言うと、ほとんどの動物は、即時的な地震の身体の運動を通してのみ世界に働きかける。例えば、人間の道具を使う能力は、他の所属と比べて非常に高い。我々の発見は、SoAのうちの幾つかは、身体のセンサーから得られる証拠が矛盾している時であっても、以前残り続ける。基本的な、形態的な一致・不一致という因子に依存しないような、身体化されていない(non-embodied)のSoAの可能性は、道具的なテクノロジーを使いこなす能力の基礎をなしているのかもしれない。神経プロスセティックスやBMIの現在の研究は、こうした、身体化されていないSoAを潜在的に活用しているのかもしれない。

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Last-modified: 2015-02-15 (日) 04:11:31 (1012d)