Formatted Citation

  • Kuylen, C., Balas, B., & Thomas, L. E. (2014). My shadow, myself: cast-body shadows are embodied. Psychonomic Bulletin & Review, 21(3), 676–81. doi:10.3758/s13423-013-0545-6

Access

Personal Summary

  • 影があたかも自分の身体の一部であるように感じられていることを、ターゲットまでの知覚距離の減少によって示したもの。

評価指標

  • perceptual matching paradigm:被験者の位置から前方に特定の距離だけ離れた地点にある目標物を見た後、(目標物を取り除いた条件で)実験者を、同様の距離だけ離れた(と感じられる)場所へ誘導する方法。

実験条件

  • カーペット上で赤のコーンを置き(8種類の距離)、被験者がそれを見るのが第一段階。その後、被験者は90度回転し、同様の距離と感じる位置へと実験者をガイドする(回転メジャーで計測)。
    1. cast-body shadow present:500Wのフラッドランプを、被験者後方から目標物に向かって投影(ただし目標物には重ならない)
    2. non cast-body shadow present:被験者後方に、巨大な書類棚を置き、後方から光を当てて角ばった影を目標物に向かって投影
    3. laser pointer present:目標物との距離を確認する際に、被験者自身がレーザーポインタを使って光を直接目標物に当てる。
    4. baseline:自然光
  • 実験1は、cast-body shadow present・laser poibnt present・basellineを比較
  • 実験2は、cast-body shadow present・non cast-body shadow present・basellineを比較

実験結果

  • (実験1)cast-body shadow presentとlaser pointer presentでは、実際よりも低く距離を見積もっている。それぞれの減少のレベルは同程度。
  • (実験2)cast-body shadow presentにおいてのみ、perceptual distortionが発現。キャビネットの影では(non cast-body shadow present)、baselineと同様で、距離感覚は乱されない。

Contents

Abstract(全訳意訳)

  • オブジェクトは、身体の延長物として定位することで、あたかもそのオブジェクトが自分自身の一部であるかのような、身体的な感覚を生み出す。
  • 我々は、 オブジェクトの身体化を促進する特性について精査することで、純粋に視覚的な刺激である投影された身体の影(cast-body shadows)が身体化されるかを検討した。
  • 道具(tools)は、身体の拡張として、遠くにある目標物を扱おうとするときに使用され、その結果、空間は知覚的に変質する。
  • 我々は、知覚的変質(perceptual distortion)が、身体の影が投影される条件でも生じるかどうか、二つ異なる距離推定マッチング課題を使って検討した。
  • 仮に、観測者が自身の投影された影を自分自身の身体の延長と捉えているならば、これらの影が目標物に向かって伸びているときに、影のない条件と比べて(実験1)あるいは、身体とは異なる影が目標物の方向に投影されている条件と比べて(実験2)、より目標物が近くにあるように感じるだろう。
  • 実験の結果、知覚的変質は、身体の影が投影された条件と道具を使用する条件で生じていることがわかった(それ以外の条件 ー影のない条件・身体とは異なる影が投影された条件ー では生じないことがわかった。
  • これらの結果は、身体に投影された影は、物体との相互作用や直接的な触覚フィードバックを持たないにもかかわらず、観測者はそれらの影をあたかも自分の一部であるかのように捉えていることを示している。

General Discussion(全訳意訳)

  • 本結果は、身体の影が知覚距離を変質させるような身体拡張の効果を持つことの最初の証拠を提供する。身体の影は、他の身体化されうるオブジェクト(allograftや義肢またはラバーハンド)のように身体構造上の類似点を有しており、その意味で、同様の特徴を共有しているといえるが、一方で、影以外のものは、視覚と触覚の組み合わせによって、身体の所有感の(擬似身体への)変調プロセスが発動する (e.g., Durgin, Evans, Dunphy, Klosterman, & Simmons, 2007; Murray, 2004; Ramachandran & Rogers-Ramachandran, 1996)。道具は、身体の延長と感じられるにあたって、身体と似ている必要はないが、やはり、allograftや義肢、ラバーハンドがそうであるように、視覚ー触覚のフィードバックが、身体化プロセスにおける要である (Yamamoto et al., 2005)。身体の影は、これらと異なり、視覚フィードバックのみを提供するものであり、触覚を伴わずに身体化を引き起こす唯一の事例であると考えられる。
  • 身体の影は、我々の身体から伸びていくように位置し、知覚された距離を変質させるという点で道具と似ているが、道具と異なり、環境に対して働きかけることができない。行為と知覚の関係に関する近年の理論は、行為のcapabilityや意図といったものが、直接的かつ速やかに知覚の質に影響することを示している (Proffitt, 2006; Witt, 2011)。様々なempiricalな証拠はこの考え方を支持しており(e.g., Davoli et al., 2012; Linkenauger et al., 2009; Thomas, Davoli, & Brockmole, 2013; Witt & Proffitt, 2008; Witt et al., 2005) 、実際、本実験のlaser pointer condtionにおいて、知覚における相互作用にドライブされた変化の基本的な効果が再現された。我々は、こうした従来のアイデアを書き換えるというよりは、身体化に基づく知覚変質の理解を、目的志向の行為が関与する状況を越えて扱えるように拡張したい。研究者は、近年、身体性認知の研究をより前に進めるためには、goal-directedな行為のものとは切り離された身体の役割に目を向けるべきと主張している (Borghi & Cimatti, 2010)。我々の仕事は、他の物体と相互作用を起こしたり、goal-directedな行為を遂行する能力を生来的に欠いている身体の延長であっても、なお身体化が可能であることを示しており、こうした方向の最初のステップを踏み出すものである。
  • あるオブジェクトが身体化するにあたって、どのような特徴を備えている必要があるのか?視覚的なフィードバックがない状態で、道具を使用しているのを想像するだけでも知覚が変質することが知られており (Davoli et al., 2012; Witt & Proffitt, 2008)、動作によって外界との相互作用をシミュレーションすることによって、おそらくは、現実の相互作用のときに生じる神経活動と同様のパターンをを経由することで、ユーザが道具を自身の身体の拡張と感じさせることができることを示唆している (e.g., Creem-Regehr & Lee, 2005; Higuchi, Imamizu, & Kawato,2007) 。
  • 想像上の触覚を誘発する視覚フィードバックによって、観測者は、ラバーハンドを自身のボディースキーマの中に取り込むことができるが (Durgin et al., 2007), このことは、想像上のあるいは錯覚を通じての視触覚同期のフィードバックもまた、身体化の感覚を醸成するうえで十分であることを示唆している。ところが、自身の影から触覚のフィードバックを受けて何らかの運動を生成するのは不可能であり、これは、影の運動に関するシミュレーションを発動する能力を著しく制限している。しかし、我々が示したように、身体の影は、それらが身体化されているかのように距離感覚を変調させており、直接的な触覚フィードバックや相互作用が与えられないものであっても、それらが身体の一部であるような能力を獲得できることを示している。
  • 我々の結果が示すのは、身体の影は、物理的な身体を引き伸ばした自己の身体の一部として捉えられ、観測者と目標物との外見上の距離を縮小させることだ。さらに、観測者自身の影は、他の身体拡張物と同じような知覚の改変を迫るが、身体の影でない場合は、そのような効果は得られない。影は、各人にとって最も強力な(身体形態的な)類似物であることから、観察者の知覚を変調させるのかもしれない。このとき、観察者は、自分自身の影の位置を、自分自身の身体部位の位置を感知するのと同様の処理で感知している (de Vignemont, 2011) 。Pavani and Castiello (2004) は、視覚的な干渉要素を手の影の位置に提示した場合に、自身の手そのものに提示された場合と同じような、触覚弁別課題(tactile judgement task)における感覚間干渉(cross modal interference)が観測されることを示した。この結果も、また、脳が、身体形態的なレベルで、自身の影を身体そのものとの関連で符号化していることを示唆している (Maravita, 2006)
  • 本研究の被験者は、影を提示される条件において静止状態を維持していたが、影の視覚上の動きと細かな固有感覚信号との間のわずかな同期や、こうした同期に関する経験的知識が、身体の影の身体化への影響を決定づける要素となっている可能性もまたあるだろう。実際、Holmes and Spence (2006) は、身体の影の一つの効果は、身体外(extra personal)の視覚イベントを、同時に生じている固有感覚の事象と結びつけることであると提案した。一方で、身体化によって引き起こされた知覚変質に関する以前の仕事は (e.g., Davoli et al., 2012; Witt et al., 2005)、重要な理論的方法論的要素としての行為に着目したものである。こうした実験デザインでは、被験者は、あからさまに環境の中で何らかのオブジェクトに対して行為するように誘導され、従って、オブジェクトそのもののみならず、オブジェクトと関わる際に使われている道具に対しても注意が向かうことになる (Farnè et al., 2005)。本実験におけるcast-body shadow条件は、こうした累々たる距離知覚研究から、actionの要素を取り除いたものであり、事後のアンケートに対する回答を考慮すると、本実験の被験者は、自分自身の影にそれほどの注意を払っていないようだ。どのような特徴が身体の影の身体化を促進しているかにかかわらず、本成果は、いつ・どのように観測者がオブジェクトを自分の一部であるかのように感じるようになるかの理解を前に進めるにあたって、影(という属性)の有用性を示すものである。

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Last-modified: 2015-02-17 (火) 05:58:10 (1010d)