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  • Preston, C., Kuper-Smith, B. J., & Henrik Ehrsson, H. (2015). Owning the body in the mirror: The effect of visual perspective and mirror view on the full-body illusion. Scientific Reports, 5, 18345. doi:10.1038/srep18345

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Abstract

  • 鏡を使うと、我々は自分の身体を三人称的な視点、すなわち観察者として眺めることができる。一方で、鏡を通して自分自身を眺めることが、一般的な三人称視点の条件と比較して、身体表象の中枢的機能にどのような影響を及ぼすのかについては、十分に理解されていない。
  • 一連の実験を通して、複数の感覚を統合するFull body illusionが誘発された。その中で、1)鏡を使った三人称視点、2)鏡を使わない三人称視点、3)一人称視点のいずれかの視点から捉えられたマネキンに対する身体所有感の変調を行った。
  • 鏡を使わない三人称視点と比べると、被験者の身体と鏡に映るマネキンの身体に同時に触覚刺激を付与することは、マネキンに対するより強い所有感を誘起するとともに、恐怖刺激に対する神経生理学的応答の差分(コントロール実験と比して)もさらに強いものであった。また、鏡を通してマネキンを見ることによって得られる所有感に対する主観値は、一人称視点によるものと、統計的に同等であった。
  • これらの発見は、鏡が、自分を眺める上で特別な役割を有していることを示唆している。また、これらの結果は、身体所有感に対する自己中心座標系(egocentric reference frame)の重要性を支持するとともに、自分の身体の鏡面反射が身体近傍空間(身体表象を更新することのできる)と関連付けられていることを示唆している。

INTRODUCTION

三人称視点のFull-body-illusionは可能か?

  • 近年の一人称FBI vs 三人称FBIの一連の研究によると、自分の身体の前方数メートルの地点において三人称視点で観察される身体は、RHIにおいて投射された所有感ではなく、写真の中に映っている自分を、それが自分であると認識する経験と似ている。
  • VRを使ったMaselli(2013)*1らの実験によると、三人称視点から得られるFBIでは、錯覚を構成する必須要素の一部が欠けるという. すなわち、FBIにおいても、RHIと同様のルールが適用される(つまり、180度回転させた手に対するRHIが生じないように、三人称視点のFBIは存在し得ない)。

日常空間における鏡の役割

  • 鏡は、自分の身体を傍観するために最も頻繁に使われる方法。
  • 人間以外に鏡を認識できる動物はわずかであり、自己意識を判定する物差しとしての役割も担う。
  • 鏡における自己の認識のメカニズムは、コンピュータゲームや写真の中の自己を認識する際に働くものと同等かなのか?
  • 鏡は自己認識だけでなく、髭剃りや運転時などの複雑な動作のvisual guidanceとしても使われる。我々は、幼少時に鏡の空間的変換を理解できるよになる。これは、写真やイメージの中で自分を認識する際の空間的変換を伴っているように見える。

鏡に関する神経学的知見

  • &color(brown){''somato-paraphrenic(身体パラフレニア)患者において、半側麻痺にように失われた手足の所有感が、鏡の反射を体験している間に一時的に回復されることがある。患者が、自分の手を直接に見ている時、所有感は誰か他人のものに帰属するいっぽうで、鏡を介することによって、それが自分のものであると思えるようになるのである((Fotopoulou, A. et al. Mirror-view reverses somatoparaphrenia: dissociation between first- and third-person perspectives on body ownership. Neuropsychologia 49, 3946–55 (2011). ))。''};
  • これらの発見は、鏡を通して更新される身体の表象には固有のルートが関係していることを示しているのかもしれない。いっぽうで、この復権は、患者が鏡を見なくなると、すぐに逆戻りしてしまうわけで、その意味では、このプロセスは、より「self-recognition」のメカニズムと近いように思われる。

鏡とRHI

  • Bertamini(2011) *2によると、鏡を通してのみ見られるラバーハンドに対しても、同期的な視触覚刺激を与えることで、RHIが生じる。錯覚の強度は、主観評価とドリフト値によって評価されたが、鏡を他人の手や偽の手に置き換えると、錯覚が減退する。よって、三人称視点を前提とした空間では、錯覚誘発の可否にとって、「鏡の存在」が重要な要件となっている(この実験では、鏡条件と非鏡条件とを直接には比べていない)。
  • Jenkinson(2015)*3は、鏡と非鏡条件を直接に比較し、正確な鏡面反射と一致しない手の像に対しても、RHIが誘発できることを示した. このときに得られた錯覚の強度は、鏡面反射一致条件とも同等であり、さらに、一人称視点の通常のRHIよりも有意に減退した。

鏡とFBI

  • 鏡はFBIでも登場しているが、研究の大部分において、鏡は、身体を見る主要なモードからは外れている。これらの実験では、被験者が見下ろしたとき、身体近傍空間領域における一人称視点で、コンピュータによって作られたアバターの身体が映る。いっぽうで、被験者が見上げたときは、ある距離を離れて背の高い鏡と対面し、そこでは、アバターの身体と顔の鏡面が映る。このように、所有感の変調は、一人称視点によってトリガーされるので、鏡の鏡面反射が身体所有感に及ぼす影響については不確定である。
  • Gonzales(2010)*4らの研究チームは、しかし、一人称視点を完全に排した状態で、鏡面によるFBIの影響について検討を行った。このなかで、アバターの動作の影響が議論され、自発的な動作が、sense of agencyのような付随的なプロセスを活性化させる。この研究では、鏡による空間変換の特定の影響は、直接的には議論されていないため、非鏡面条件との比較もされていない.

本研究の目的

  • 本実験では、鏡のなかで視られるpassiveなマネキンに対するFBIに関する検討を行った。一連の実験のなかで、同期・非同期の視触覚刺激のそれぞれの環境において錯覚に関する主観データと客観データを得た。鏡面環境における錯覚強度が、鏡を使わない三人称視点条件と直接比較された。我々は、鏡を通してマネキンに対して同期して触覚刺激を与えることが、鏡を使わない三人称視点と比較して、より強い身体所有感を誘発する(さらに、一人称視点と同等の所有感を誘発する)という仮説をもとに実験を行った。さらに、

Results

Experiment 1: mirror vs. non-mirror, questionnaire data.

  • 主観評価(ownershipに関するアンケートのscore)
    • Mirror条件もNon-Mirror条件もSync vs Asyncで、有意(**)にSyncの値が高い。
    • SyncをFixして、MirrorとNon-Mirrorを比較すると、Mirror条件が有意に高い値(*)。

Experiment 2: mirror vs. non-mirror, SCR data.

  • SCRのピーク値
    • MirrorでSync vs Asyncで、有意(*)にSyncのときの発汗が多い。Mon-Mirrorでは統計的差異は存在しない。

Experiment 3: mirror vs. first-person perspective, questionnaire data.

  • 主観評価(ownershipに関するアンケートのscore)
    • Mirror条件もFirst-Person条件もSync vs Asyncで、有意(**)にSyncの値が高い。
    • Mirror と First-Person間で、統計的差異は存在しない。

Discussion

RHI in the mirror

  • 複数の研究が、ラバーハンドを鏡を通して見た場合にでもRHIが誘発されると主張していたが、それが、body ownershipによるものなのか、self-recognitionによるものなのかについては不明だった。それらの二つの要素は、通常、分離できない。鏡は、顔などの身体部位を移すことによって、認識(recognitioon)の役割を担う。Bertamini(2015)は、この点を検証する実験を行い、鏡の実験の最中に、顔を曖昧にすることによって、錯覚強度が減退しないことを示したが、被験者はそれでも、他の身体部位は見ることができるわけだし、face-obscruredの条件は、直接的に顔が見える条件と比較されたわけではない。
  • 本研究で組んだFBIの実験では、(マネキンが使われたため)身体認識の要素は一切混入していない。一連の実験の結果は、鏡で体を見ることそのものが、直接的に中枢的な身体表象に関係し、身体所有感の生成メカニズムに影響することを示唆している。

鏡による空間の翻訳

  • いかにして、鏡の反射は、身体表象の中枢に作用するのか?我々の仮説は、身体の鏡面反射に関する視覚情報が、鏡の前方の身体へと差し戻される、ということである。
  • 鏡に映っているオブジェクトに対して我々が手を伸ばさないのと全く同じように、鏡を使ったFBIの間、観察されているイメージの正にその場所を触れているようには感じないし、我々が見ているイメージと同じ空間領域を我々の身体が実際に占めているとは感じない。
  • 代わりに、幼年期に学習される、鏡による空間変換に対する固有の知識を使って、鏡面反射からの視覚情報は、我々自身の身体へと翻訳し直され、複数感覚を統合して生まれる身体表現へと影響される。
  • 鏡条件においてのみ、(実際は本物の鏡ではなくマネキンを見ているにもかかわらず)「私は鏡を覗いている気がする」というアンケート項目に対する参加者のratingは高い。この点が示唆していることは、鏡を見ながら、マネキンが(自分が触られているところと同じところを)触られるのを見るという体験は、鏡の前に直接的に立っているマネキンに対する所有感を生む、ということである。反射する視覚情報は、被験者の身体周りの身体近傍空間へと差し戻され、鏡の前の不可視の現実の身体周りの自己中心座標系を基礎とする触覚情報と固有感覚情報とが結びつけられる。
  • この解釈は、(Maravita2002)*5による、cross-modal congruency taskから得られた行動学的データ(鏡の視覚的反射は身体近傍空間領域内特有の視触覚交互作用を導く。また、これは、鏡を使わないRHIで見られる現象とよく似ている)と一致する。
  • 通常の3PPの場合、この視覚情報の空間翻訳を行われないため、視覚情報は、被験者の身体近傍空間の外部で生じたイベントとして処理される。その結果、錯覚の強度は減退する。この解釈は、(Petkova2011)*6と一致する。
  • 他人が自分を見ている時(3PP)と全く同じように、我々は、自分が文字通り鏡の中に立っているとは感じられない。代わりに、鏡の空間変換に対する知識は、鏡に映る(自分自身の身体を含めた)あらゆるオブジェクトを、鏡の前の世界へと直接に関連づける。従って、自分自身の身体に対する鏡像は、身体近傍空間領域において複数の感覚が統合されて成立する、一人称視点における身体と同等である。

感情的な側面に与える影響

  • 身体パラフレニアの患者が、鏡を見て一時的に身体所有感を取り戻すという現象について、それがself-recognitionによるものなのか、body ownershipによるものなのかについて、明確な解答は得られていない。この点については、今後の追加実験を待つ必要がある。
  • 鏡は、affectiveな身体表象にとってより重要である。(Preston2014)*7によると、BOIによって、一人称視点で知覚される身体サイズを変えることによって、身体に対する満足感を直接的に変えることができることが示されている。鏡像に対する社会的な含意から察するに、鏡を見ている間の身体サイズの変調は、我々の感情により強い影響を与えるだろう。

SCR実験

  • SCR実験で、SYNCをFIXした場合のmirror条件とnon-mirror条件で有意な差がでなかったのは、条件間で、Threat刺激の与え方に差があったため。

body ownershipなきreferral of touch

  • FBIにおける錯覚の体験は、異なるコンポーネントからなる。これらのコンポーネントは、接触転写(referral of touch)と明確な身体所有感(explicit feelings of ownership)を含む(これらは、今回のアンケートの聴取項目に含まれる)。
    • referral of touchは、マネキンへの(視覚的な)接触を、自分自身への触覚と感じること。
  • 過去に行われた実験の結果をretrospectiveに精査してみると、body ownershipに直接関わるような設問(例えば、「マネキンの身体が自分の身体のように感じた」)は、visual perspectiveの影響を強く受ける。
  • 一方で、被験者は、鏡無し・三人称視点の条件であっても、referral of touchに対して、ある程度の肯定的な解答をしている。このように、本実験に限らず関連研究でみられる、三人称視点で生じる微弱に残存する(residual)錯覚は、錯覚の特定なサブコンポーネントによってdrivenされているのかもしれない。すなわち、視触覚同期は、ある程度のreferral of touchを誘発するには十分である。もちろん、身体近傍空間の制約に従うことは、完全な意味での身体所有感(full sense of body ownership)を得るためには不可欠であるが。
  • 本実験は、これらの錯覚体験における異なる側面を分離するようには設計されていなかったので、今後の課題。

summary

  • まとめると、本研究の重要な発見は、鏡が、一人称視点と同じように、中枢的な身体表象のアップデートを誘発するということである。一方で、鏡を使わない三人称視点による効果は、有意に減退する。こうした発見は、visual perspectiveが身体所有感の生成において重要な役割を果たすという主張と矛盾しない。そして、鏡が、我々の身体に固有の一人称視点を外部から提供できるという意味で、自分自身を眺める特殊なモードであることを示唆している。

*1 Maselli, A. & Slater, M. The building blocks of the full body ownership illusion. Front. Hum. Neurosci. 7, 83 (2013).
*2 Bertamini, M., Berselli, N., Bode, C., Lawson, R. & Wong, L. T. The rubber hand illusion in a mirror. Conscious. Cogn. 20, 1108–19 (2011).
*3 Jenkinson, P. M. & Preston, C. New reflections on agency and body ownership: The moving rubber hand illusion in the mirror. Conscious. Cogn. 33, 432–42 (2015).
*4 González-franco, M., Pérez-marcos, D., Spanlang, B. & Slater, M. The Contribution of Real-Time Mirror Reflections of Motor Actions on Virtual Body Ownership in an Immersive Virtual Environment. Paper presented at Virtual Reality Conference (VR): 2010 IEEE, Waltham, Massachusetts, USA. New York: IEEE (2010, March, 23).
*5 Maravita, A., Spence, C., Sergent, C. & Driver, J. Seeing your own touched hands in a mirror modulates cross-modal interactions. Psychol. Sci. a J. Am. Psychol. Soc./APS 13, 350–355 (2002).
*6 Petkova, V. I., Khoshnevis, M. & Ehrsson, H. H. The perspective matters! Multisensory integration in ego-centric reference frames determines full-body ownership. Front. Psychol. 2, 35 (2011).
*7 Preston, C. & Ehrsson, H. H. Illusory changes in body size modulate body satisfaction in a way that is related to non-clinical eating disorder psychopathology. PLoS One 9, e85773 (2014).

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Last-modified: 2015-12-25 (金) 18:52:05 (698d)