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  • Petkova, V. I., Khoshnevis, M., & Ehrsson, H. H. (2011). The perspective matters! Multisensory integration in ego-centric reference frames determines full-body ownership. Frontiers in Psychology, 2, 35. http://doi.org/10.3389/fpsyg.2011.00035

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Abstract

  • 実験科学における近年の進展によって、身体全体を所有する感覚を生成する際に関与する知覚プロセスに関する議論がすすんでいる。これは、特定のパターンの視覚と触覚刺激の統合から生まれるfull-body ownership illusions(FBI)の産物である。
  • 本論文で、我々は、身体全体を自己に帰属する過程で使われる参照系(reference frame)に関する、一つの根本的な疑問を取りあげ、考察を行う。我々は、被験者が人工身体を一人称か三人称のいずれかの視点で観察するような状況を準備し、body-swap illusionの強さを定量的に測定した。
  • 主観評価と神経生理学的計測において得られた一貫性のある結果は、full-body ownership illusionの誘発において、一人称の視覚を持つことが決定的に重要であることを示している。このことは、また、肉体的な自己感(sense of corporeal self)を生み出す複数の感覚間統合のプロセスは、自己中心参照系の中で作動していることの証左である。

INTRODUCTION

Full-body-illusion

  • FBIは、自己意識(self-awareness)における重要な側面を記述するうえで強力な手法である。
  • FBIの一種である、body-swap illusionにおいては、被験者は、マネキンへの接触を自分自身の身体に対して生じているものと感じる(HMDによる一人称視点)。マネキンを、人の形をしていない、恣意的なオブジェクトに置き換えると、錯覚の強度は著しく減退する(Petkova and Ehrsson, 2008)

三人称視点とは何か?

  • 空間認知の研究では、一人称視点は自己中心参照系(ego-centric reference frame)に、三人称視点は身体外空間のある一点を参照点とする、環境中心参照系(allocentric reference frame, ARF)と関連付けられる。
  • ARFは、環境に散りばめられたランドマークや、空間におけるナビゲーション、空間記憶に関連付けて自己の位置を決定するような空間認知の各局面において重要な役割を果たすと考えられている。
  • 自分の身体が自分の身体の外へと定位され、改変された自己中心参照系からもう一つの自分を見る体験をする人がいる(autoscopy)。このとき、体験者は確かに、自分自身を観察していると報告する。このケースでは、三人称視点から見られた身体に自分の身体が帰属していることになる。

FBIの誘発には二種類の視点が採用されている

  • FBIには、以下の二つのパターンが存在する。
    1. 自分自身の数メートル前に、もう一つの身体を見ているかのような三人称視点の実験系(Lenggenhager et al., 2007,2009;Aspell et al., 2009)
    2. あたかも自分自身の身体から直接見ているかのような感覚を与える一人称視点の実験系(Ehrsson, 2007; Petkova and Ehrsson, 2008; Slater et al., 2009,2010)
  • 論理的には、いずれの視点においても等しく身体所有感の変調が生じるはずであり、実際、一部の研究者は身体所有感は、単に視覚と触覚の同期の検出に依存するものと結論づけている。
  • 本論文では、どちらの視点が、身体所有感を与える一般的なメカニズムにおいて優勢となっているかを、実験的に直接比較する。

MATERIALS AND METHODS

  • 1人称FBIにおいてのみ、ASYNC vs SYNCにおける、マネキンに与える恐怖刺激に対するSCRの有意な上昇が観測された(実験2・実験3)。
  • 身体所有感に関する主観評価についても、三人称FBIと比較して一人称FBIが優勢。しかし、三人称視点でも平均して、+1程度(-3から+3の7段階)の高いrating(実験1)。

DISCUSSION

今回の結果は従来の一般的知見を踏襲している

  • 今回の結果は、手足に関する自己帰属において、body-part-centered reference frame(身体対象部位を中心とする参照系)における複数感覚感統合が重要であるというモデルとも適合する。
  • FBIは以下の三つの要素に依拠して成立すると考えられる。
    1. 身体近傍空間領域内で適用される視覚と触覚の信号における時間的一致
    2. 新しい身体が、十分に人型をしていること
    3. 一人称視点を持っていること

自己認識と身体所有感の差異

  • 今回の結果は、一人称視点における錯覚が、真正なる(genuine)身体所有感の錯覚であり、単に、鏡や監視カメラにおいて自分自身を認識する場合の自己認識(self-recognition)のより一般的な形式というわけではない、という考え方に適合する。
  • Enfacement effectにおいて、人々は、自分自身の顔と相対して座る別の人の顔に同時に触覚刺激を与えることで、顔の視覚認識に(他人の顔の方向へ)バイアスがかかる。(Tsakiris, 2008; Sforza et al., 2010)
  • この実験では、三人称視点から他人の顔をみるタイプのものであるが、低いアンケート結果のスコアが示しているように、顔に関する所有感の意識的な取り違えは生じていない。そのことは、本実験結果の見解と合致している。

三人称視点を採用した前方シフトFBIはBOIか、単なるSelf-recognitionか?

  • (前方シフトFBI実験における)同期刺激付与時の高いスコアは、被験者が、意識的に実験セットがつくりだす空間変換図式を理解している(自分自身が後ろから撮影され、そのイメージが自分自身の前に投影されているという状況設定を意識している)ことによる、視覚的な自己認識(self-recognition)プロセスの結果であるという可能性は除外できない。彼らが見ているバーチャルな身体が、自分自身の身体の視覚的表象であることを認識するうえで、(RHIやbody-swap illusionのように)必ずしも身体所有感のレベルで錯覚を伴う必要はない。
  • (Lenggenhager et al., 2007)の三人称視点・前方シフトFBIは、触覚に関わる錯覚が不在あるいは有意に弱い。
  • 本実験では、三人称視点において同期刺激を与えた場合、BOIに関するアンケート回答がやや高くなる傾向にあるが、1PPのそれと比較すると有意に低下し、また、SCRに関しては三人称視点の試行において同期・非同期間の違いは生まれない。
  • したがって、我々は、この効果については、真正なるからだの錯覚(genuine body illusion)というよりは、むしろ、一般的な自己認識(self-recognition)の一形態と捉えるべきと考える

身体近傍空間の領域内であれば、三人称視点FBIは生じるか?

  • 本実験における三人称視点条件では、観察者は、ビデオを通して、三人称視点で相対するマネキンを眺める。この時、マネキンは、観察者の身体近傍空間領域内ではなく、身体領域外に置かれている。
  • その意味で、論理的には、このファクターのみが、(身体近傍空間内で観察される)1PPと3PPの違いを生み出している可能性もあるが、筆者らは、そのような可能性は極めて少ないと考える
  • RHIにおいて、ラバーハンドを回転させてしまうと、たとえ、それが身体近傍空間内部にあっても、錯覚が崩壊してしまうことが知られているが、同様に、ラーバーハンドが、はるか離れた身体外空間に置かれた場合も錯覚が壊れること知られてる。 すなわち、一人称視点と、身体近傍空間内部で身体を呈示することが、vividなFBIを誘発するための必要条件である(一方で、身体近傍空間内部で三人称視点でマネキンを置いた場合に実際にどうなるかは、テストする必要がある)。

一人称FBIに関わる脳内メカニズムは?

  • ここで得られた結果は、身体イメージを構築する際の複数感覚統合に関する神経生理学や脳画像イメージングの領域の中の知見とも整合する。
  • 霊長類動物の脳内では、身体中心参照系において視覚・触覚・固有感覚を統合するうえで、頭頂間皮質(intraparietal cortex)・下頭頂皮質(the inferior parietal cortex)・前運動皮質(premotor cortex)・被殻(putamen)の関与が示唆されている。
  • これらの領域は、RHIや、FBIでも関与していることがわかっている。
  • FBIの知覚原理も、この領域における複数感覚統合に根拠を持っていると考えられる。

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 12:34:03 (720d)