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  • Limanowski, J. (2014). What can body ownership illusions tell us about minimal phenomenal selfhood? Frontiers in Human Neuroscience, 8, 946. doi:10.3389/fnhum.2014.00946

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Personal Memo

  • 感覚間同期をベースにして「身体所有感」を変調させるRHIやFBIといった手法は、現象学的な自己の核心を揺るがすものではない。
  • 素朴に言って、RHIやFBIの最中にあって、人はパニックを起こしたりするわけでもなく、錯覚後に致命的な後遺症を残したりするわけではない。つまり、こうした錯覚は、全体的な自己にとっての部分的な特徴をswapさせているだけで、部分に還元できない自分という枠組み(subjective "lived body"、経験の主体である「I」)が消えたり、別のものになるというわけではない。
  • 外受容感覚からの入力が切断されている時でも自分という枠組みが存続していることを踏まえると、minimal phenomenal selfhoodにとって「explicitな身体表象」は必ずしも必要なものではない。
  • すなわち、body ownershipは、minimal phenomenal selfhoodの重要な要素ではあるが、必要条件ではない。
  • Free Energy Principleに従うと、自己は、確率的な濃淡を持って階層的にモデル化されるものであり、したがって、RHIやFBIがそうした自己の階層性におけるどの領域をターゲットにしているかを検討することこそが、今後重要になってくる。

Contents Summary

身体所有感に関する錯覚

  • RHI(rubber hand illusion)・FBI(full body illusion)はBOI(body ownsership illusion)のグループ。
  • BOIで操作している「身体を持っているという感覚」は、MPS(minimal phenomenal selfhood)を可能とする条件の一つ。
  • MPSは、自意識(self-consciousness)あるいは自己意識(self-awareness)を可能とする最も基本的な形態。
  • BOIとMPSの関係は未だ不透明。
  • BOIは神経生理的な水準にも影響を及ぼす。温度の低下(Moseley et al., 2008)に加え、免疫系におけるprotectionの機能が低下するという報告も(Barnsley et al., 2011; Costantini, 2014)
  • 一方で、BOIが「身体という統一的な体験へと収束する種々の要素」を分離させて作用するという事実は、MPSとの関連でとらえる場合、根本的な限界を示しているかもしれない。

客観的な身体と主観的な身体・meとI

  • 身体のパラドックス:我々の体が、世界の部分としての、物理的な実体である客観的水準(objective)の身体であると同時に、世界を体験し、世界に関わる際の媒体となるような主観的水準(subjective)の生ける身体("lived" body)であること(フッサール、メルロポンティ、サルトルなどが指摘)
  • 我々は、普段は、こうした「lived body」を、世界と関わるうえでの必須なものとは捉えていない。この身体の経験的不在("experiential absence")こそが、「ここにいる」という漠然とした感覚("being there”)を我々に与える。
  • William Jamesの言葉を使うならば、BOIは(個人に帰属させられる特徴としての)「me」の領域に抵触し、経験の主体である「I」には抵触しない。
  • 実際、こうしたパラダイムの中で、「body ownership」という言葉が指しているのは、知覚された身体の自己同一化(self-identification)の水準にある。

確率的に自己をモデリングする

  • MPSは以下の際立った特徴に分解できるが、それらは、自意識そのものというよりは、あくまでも(自意識を構成する)一つの現象的な属性である。
    • self-identification
    • self-location in space and time
    • first-person perspective
  • MPSの概念化はpreditive codingをベースにした皮質下情報処理の理論である「free energy principle(FEP)」(Friston, 2010)と見事なまでに可換的である。
  • FEPは、脳が、常にセンサー入力に伴う結果を予測し、予測に失敗するとそれを更新するかたちで、世界に対して階層的で生成的なモデルを設計するという仮説を持っている。
  • 予測誤差を下げるための双方向的で階層的な情報のフローに伴い、このモデルは、空間的・時間的・そして現象的なレベルで、生物個体それ自身の中心に定位される。
  • self-representationは確率的・可塑的で、階層的で、それでいて統合されている。この点、MPSの概念化として重要な、現象的な自己が確率的な自己モデリングの結果であるという仮定と一致している。
  • MPSとFEPは、自己のモデル化が確率的であるゆえに、現象的な自己にとって、一見「危険なビジネス」をしているようにみえる。つまり、別のモデルとの適合性が高まることで、自己中心世界におけるモデルの主体性が減少するおそれがある。しかし、実際は、そういうことにはならない。予測誤差があまりに大きくなると、適応のモードに移行せず、ただ、現在のモデルが棄却されるだけである。これはBOIで実際に生じていることである(Hohwy, 2013; Limanowski and Blankenburg, 2013; Apps and Tsakiris, 2014)。
  • このような自己表象(self-representation)の更新プロセスは、dummy hand (Longo et al., 2009) や顔 (Tsakiris, 2008; Apps et al., 2013) に対して知覚される類似性が徐々に増加すること、あるいは、dummy handに対して触覚を予期するだけでBOIが誘発されること (Ferri et al., 2013) によって証明されている。
  • こうした観点から、BOIは、有機体によって実行される特定の推論機能のプロセス(よって、MPSの確率的モデルによって説明される機能的アーキテクチャ)であると思われるかもしれないが、いくつかの疑問も存在する。

BOIはMPSの本体へと侵食できるか?

  • BOIは主に、自己モデリングにおける低いレベルに関わっているようにみえる。一つ目の理由は、誘発された矛盾は、パニックや病理的な症状を残さずに容易に解決されること、二つ目の理由は、モダリティー間の再キャリブレーションが、どちらかというと基本的な「multisensory mechanism」によって達成されるからである (Tsakiris, 2010; Blanke, 2012; Gentile et al., 2013)。
  • 他方で、神経生理学的な応答の適応は (Ehrssonet al., 2007; Moseley et al., 2008; Barnsley et al., 2011) 、BOIが、自己モデリングのより高いレベルに影響を与えていることを示唆している (Seth, 2013)。
  • BOIのMPSに対する作用を理解するためには、BOIがMPSのどのレベルに影響しているかを特定することが極めて重要。BOIは、どういったときに、単なる自己の知覚的な特徴を変えるのか、あるいは、MPS本体に本質的に作用するのであれば、それはいつ、どんなかたちで?

phenomenal unit of identification(UI)

  • phenomenal unit of identification(UI)は、Metzinger (2013a,b) によって提唱されたMPSの概念化。定義は、「『私はこれである』という主観的な体験を生成しているアクティブな現在の意識内容をまさに特定している際に働いている現象的な属性」(“the phenomenal property with which we currently identify, exactly the form of currently active conscious content that generates the subjective experience of ‘I am this”’ (2013b)).
  • 筆者によるとUIは二つの使い方に分かれる。
    • 自己モデルが特定される内容を包含するもの(この自己同一化は、MPSの経験へと接続される)
    • あるいは、UIは、current generative modelの証拠や起源として捉えられるかもしれない(最も分散の少ない領域が自己?)(the “region of maximal invariance,” Metzinger, 2013a; see also Friston, 2011; Limanowski and Blankenburg,2013).
  • UIという新しい概念は、BOIがMPSに部分的にしか影響しない点ついて、非常に示唆的である。BOIによって特定の身体的特徴の表象が変更されるが、それはMPSの本質的な状態に侵食している一方で、UIを変えるには十分ではない。
  • BOIの拡張であるFBIであっても、UIの変更にまでは至らない。
    • FBIは、RHIと同様に感覚間刺激メカニズムを下敷きにしており (Petkova et al., 2011; Maselli and Slater, 2013)、実際には体全体ではなく、刺激された身体の一部のみが錯覚に晒されている可能性がある。FBIに関しては、腰の部分である (e.g., the torso in the FBI, Smith, 2010; Metzinger, 2013a; see Tsakiris et al., 2006, for such evidence).
    • さらに、FBIが操作するのは、個々の視覚的外観や物理位置としての要素的な表象である。

身体なきUI

  • 興味深いことに、Metzinger (2013a,b)の説明によると、UIが変質するのは、「とりとめのない夢想状態(mind wandering episodes)」「boidless dream」あるいは体外離脱に近い体験の最中であるという。
  • explicitな身体表象は、MPSにとって実際には必要ではない、ということの主張は、核心的自己(core self)が、外受容感覚からの入力が切断されている時でも存在しているという提起 (e.g., during sleep, Park and Tallon-Baudry, 2014)によって支持されるだろう。
  • こうした提案は、インスピレーションを与えてくれるものだが、身体とMPSとUIの正確な関係を理解するには、まだ多くの仕事が残されている。
  • FEPに従うような確率的モデルは、ベースとなる自己モデリングのメカニズムを記述するうえで、期待の持てる手法であるが、加えて、MPSの特定のレベルを記述するための、新たな実験的な手法が必要である。
  • 混乱を避けるため、これらの手法は、身体が持っている二重の役割(主観的体験と客観的体験)を可視化できるようなものでなくてはならない。

結論

  • BOIは、MPSを理解するための重要なツールであることは周知のところであるが、BOIが自己の表象にとっての個々の特徴のみを操作しているのであって、MPSの一つの次元を操作することが、必ずしもUIに影響を与えているわけではないことについては心に留めておくべきである。
  • そうはいっても、仮に、現象学的に見事な確率モデルの中に定位できれば、BOIは、その階層性を詳らかにすることによって、MPSの理解・UIの概念の洗練化・さらにそれの身体との関係を明らかにすることに貢献するだろう。
  • 「誰か他の人になる」ような錯覚を実際に生み出すようなUI操作のパラダイムを前進できるかという問題は、少し毛色の違う問いかもしれない。しかし、それを追い求めていった先に、有望な前進が見込めるだろう。

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Last-modified: 2015-02-24 (火) 12:41:03 (1002d)