Braun, C., Hess, H., Burkhardt, M., Wühle, A., & Preissl, H. (2005). The right hand knows what the left hand is feeling. Experimental Brain Research, 162(3), 366–73. doi:10.1007/s00221-004-2187-4

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abstract

  • (背景) 身体の異なる部位に対する弱い触覚刺激に対する誤認識を分析することで、触覚刺激に関する情報処理に対する洞察が得られる。
  • (実験) 15人の被験者に対して、左の手に対する触覚刺激が右の手に関する知覚に与える干渉を調べることで、左右の半球間の体性感覚の処理について検討した。異なる条件で、右手に対する触覚刺激の200msあるいは500ms前に、左手の親指または小指に、閾値を超える干渉刺激が与えられた。
  • (結果) 左手に与えられた干渉刺激は、右手に与えられた刺激の場所(どの指か?)に関する解答に甚大な影響を与えた。左手の親指に対する刺激によって、(実際には右手の親指に刺激が無いにも関わらず)右手の親指と解答する誤答数が増加した。同様に、左の小指への刺激によって、場所の解答が全体的に右手の小指の方向へと移動した。
  • (考察) 以上の結果は、身体のそれぞれの側からの体性感覚情報の交互作用にひきつづき、体性感覚の全体像が構成されるという仮説を支持している(Results support the hypothesis that interaction of somatosensory information originating from different sides of the body follows a somatotopic organization.)

Discussion(全訳気味、、)

一方の手への刺激のみに注目すると、誤認識は近接原理に基づいている

  • 他方の手への前刺激無しの、純粋に一方の手に弱い(faint)接触刺激を与えた際の位置の誤認識の傾向を見ると、本実験でも、過去の実験で得られていた発見が再現されていることがわかる。偽の刺激(sham stimulation)によって(被験者によって刺激があったと)同定された指の分布と、かすかな触覚刺激(faint tactile stimuli)で得られた分布を比べると、以前の研究と同じように、誤認識が起きる場合には、刺激された指に隣接された指を選ぶケースが圧倒的に多い(Schweizer et al. 2000, 2001)。刺激された指から(隣接距離以上に)離れた指での誤認識の生起率は、コントロール条件(小鷹:sham stimulationを指していると思われる)と比較して少なくなる。閾値超の接触刺激(supra-threshold tactile stimuli)が、対応する指の表象領域を活性化させるのみならず、隣接する指に対応する表象領域に対しても閾値下の活性化(sub-threshold activation)を生むことは、いくつかの研究から示唆されていることである(Godde et al. 1995; Moore and Nelson 1998; Chen et al. 2001; Shoham and Grinvald 2001)。この考え方によると、閾値に近い強度を持った刺激は、神経細胞を集団的に活性化させる(stimuli with intensities close to the sensory threshold activate the whole neuronal activation)。すなわち、当の対応する表象と隣接領域を、閾値下のレベルで活性化させる。閾値下の活性化と持続的な神経細胞のノイズ(小鷹:自発発火と思われる)が組合わさると、結果的に、前活性化していた神経細胞(pre-activated neurons)が閾値に到達する確率を高め、従って、接触の感覚を誘発することになる。対応領域あるいは隣接領域のどちらかが活性化するか、これに応じて、刺激の知覚場所が正しく定位されるか、誤認識されるかが決まる。本実験データと合致することには、以上のモデルは、誤認識が、刺激された指に近接した指で生じることを予言している。こうした分布の特徴が、精神物理的レベルで、体性感覚処理に対応する神経活動回路の構造を反映していることは明らかである。

実験結果の整理

  • 本実験では、体性感覚情報に関する半球間の相互作用について検討した。左手の指を刺激を与えることで、右手の刺激位置の認識の誤りに対して、強い影響を与えることがわかった。右手上の微小刺激の誤認識は、左手上の(右手上で誤認識された指と)対応する指か、隣接する指に事前に与えられた閾値超の接触刺激に起因するものが圧倒的多数であった。(事前刺激としての)左親指への刺激は、その時間差が200msの場合にのみ、右手の親指への同定頻度を有意に増加させたが、500msの場合はそのようなことは起こらなかった。逆に、左小指への事前刺激では、500msの時間差でも右手の指の同定頻度の有意な上昇をもたらした。しかし、それは、右手小指ではなく、薬指であった。この結果は、身体の左右の体性感覚処理の間で、刺激の同定機能に関して十分な干渉が存在することを示している。この点について驚くべきことに、この交互作用は、体性感覚の局在性に基づいて構成されている(the interaction is somatotopically organized)。

左右の交互作用は解剖学的にどこに存在するのか

  • 交互作用を行う体性感覚経路のレベルについては未だ解決されざる問題が残っているが、(これは、脳画像研究でのみ説明され得るだろう)、異なる可能性をここでは考えてみたい。理論的に、そのような相互作用は(皮質下・皮質レベルに関して)脊髄で生じるかもしれない。神経解剖の研究では、脊髄分節(spinal segments)あるいは視床(Jones et al. 1986)の内部で身体の体性感覚に関する反対サイドからの結合を持っているといういかなる証拠も得られていないが、脊髄あるいは皮質下の交互作用に関しては検討の余地があるだろう。 皮質レベルにおける左右間の相互作用は、一次体性感覚野(primary somatosensory cortex)に関係した初期段階で起きているかもしれないし、あるいは、二次体性感覚野(secondary somatosensory cortex)か、あるいは注意や認知機能と関連する連合的な皮質で生じているかもしれない(Reed et al. 204)。(おそらくは脳梁の神経繊維(callosal fibers)によって媒介される)一次体性感覚野での交互作用は、知覚レベルのバイアス(perceptual bias)を有無一方で、高次の交互作用は、文脈に左右されるような被験者が解答の傾向に影響を及ぼし、解答レベルでのバイアス(以下、response bias)を生み出すかもしれない。

干渉結果は、Response Biasによるものではない。

  • (中略)左手に対して、事前に干渉刺激を与えない場合とは対照的に、左親指と左小指に与えた200msあるいは500msの時間差で閾値に近い微小な事前刺激を与えた場合、(右手の対応する指に対して)解答頻度に上昇傾向が見られた。しかしながら、左親指への事前刺激によって生じる増加は、200msの時間差においてのみ、統計的な有意差に達した。また、事前刺激した指と一致しない(反対側の)指に関する解答頻度の低下は部分的なものである。例えば、左親指に対する事前刺激による解答頻度は、右手の中指・薬指・小指で減少するが人差し指では減少しない。あるいは、左小指に対する事前刺激は、右手の親指・人差し指・中指の解答頻度を減少させたが、薬指は影響を受けなかった。したがって、左手に対して事前に与えた干渉刺激は、右手の対応する指のみならず隣接する指の解答頻度を増加させているのである。結果的に、半球間の干渉効果は、特定の場所でのみ起こるものではなく、体性感覚マップにおいて広がりのあるものとなっている(the effect of interhemispheric interference is not exactly site specific, but blurred in a somatotopically manner)。仮に、response biasが、左手に干渉刺激を与えた場所に固定されるのであれば、なぜ隣接する指で強い緩衝効果が検出されるのかを説明することは難しい。干渉刺激の知覚よりも高次な連合的な処理(e.g., 指の選択傾向の根拠となる言語的な連合)は、体性感覚的な局在原理というよりは、ある語が使われる文脈や重要性、あるいは被験者にとっての親近性を変数としてすすめられるものであろう。

左右の交互作用は解剖学的にどこに存在するのか2

  • もう一つの仮説は、一次や二次の体性感覚野(primary or secondary somatosensory cortices)のような触覚情報処理に関する初期段階の半球間の交互作用に関わるものである。二次の体性感覚野は特徴的な双方向的な結合を有する(Ruben et al. 291)一方で、拡散したかたちで体性感覚的な局在構造を維持しており、一次体性感覚野と(とりわけ)ブロードマン3b野は、手足などの末梢部に関して、身体の逆サイドからの入力を占有的に(strictly)受けていると考えられている(Hari et al. 1984; Hamalainen et al. 1990; Hoshiyama et al. 1997)。こうした見方に対して意義を唱えるものとして、ブロードマン1野と2野には、同側部から刺激によって引き起こされる同側的な活性化も観察されている(Iwamura et al. 1994; Schnitzler et al. 1995; Hansson and Brismar 1999; Shuler et al. 2001; Iwamura et al. 2002)。同側における活動の一つの説明は、同側の体性感覚野が、反対側の半球から、脳梁の神経繊維(callosal fibers)を通して、入力を受け取っているというものである。ただし、その直接的な結合の数は、サルで観察されたように少ないものであろう(Killacky et al. 1983)。あるいは、一次体性感覚野あるいは二次体性感覚野の半球間の交互作用が、より高次の皮質領域と関係しているという説明も可能であろう。一方の半球の一次体性感覚野からの情報は、双方向的な結合によって進行し、引き続いて、他方の半球の一次体性感覚野の処理に影響を与えるというものである。(?→)これは、一次体性感覚野の構造におけるトップダウンの変調を示す実験と似ている(Braun et al. 2000, 2002; Moore and Nelson 1998)

閾値超の触覚刺激は左右の一次体性感覚野を活性化させる、、一方(反対半球)は知覚され、もう一方(同側半球)は知覚されない

  • より具体的には、一方の手(例えば、左手)に対する閾値超の刺激は、反対半球(右脳)の一次体性感覚野だけでなく、同側(左脳)の一次体性感覚野におけるおよそ相同的な部位の活動を引き起こすのかもしれない。仮に、(左半球における同側の)閾値下の活動が数百ミリ秒持続するとすると、右手において閾値以下で引き続いて生じる閾値に近い(微小な)刺激は、反対側の左半球における体性感覚野を活性化させるであろう。左手に付与された強い干渉刺激によって事前に活性化した領野の場所と、後続する微弱な刺激に伴う皮質の活動の広がりの度合いによっては、皮質の活動は、特定の領域において(同定に際しての)閾値を超えるかもしれない。Consecutively, 体表面において明確な触覚刺激の知覚を感じたとしても、それが必ずしも(事前刺激の後に)閾値に近い刺激を与えた場所と同一であるとは限らない。従って、左親指への超過刺激と後続する右指への微弱刺激は、右親指において閾値に近い刺激を近くする確率を高める。同様に、左小指への超過刺激は、右手のいずれかの指への刺激を右小指への刺激への割当とする確率を高めるはずである。左親指に関してはこのモデルと整合的であるが、左手の小指を刺激したときには、閾値に近い刺激を右手薬指の位置に同定する確率が高まり、このモデルと反する結果となっている。この違いは、全ての指の中で薬指の刺激閾値(sensory threshold)が最も低いという事実(Schweizer et al. 2000)によって説明可能かもしれない。薬指の高い感度を仮定することは、部分的には、少なくとも皮質上で薬指を表彰する領域における低い活性化閾値(activation threshold)を前提とするものであり、閾値超の刺激による同側への入力と閾値付近の反対側からの入力を組み合わせた、一次体性感覚野における広がりのある活動は、小指ではなく薬指の接触に関する知覚を誘起させるのに要する閾値を軽々と超えてしまうかもしれない。

frequency discrimination performanceとの比較(←原文の要確認)

  • 現実のモデルとして提案した、同側領野活性化に関する仮説は、心理物理研究からも支持されている。一つの指に関して、反対側の手の同一あるいは異なる指に対して干渉刺激を呈示した際の周波数識別能力(frequency discrimation performance)を検討することで、体性感覚局在的に構成された相互作用が明らかにされている(Harris et al. 2001)。周波数識別が済んだ(一方の手の)指と同一の(反対の手の)指に干渉刺激が与えられたときに、最大の影響が観測された。この干渉刺激による効果は、干渉刺激を与えた位置と、識別学習を行った場所の距離が増えるにしたがって低減していった。明らかに、(本実験において)他方の手に干渉刺激を与えることは、識別学習をした指と反対側の一致した指に干渉刺激を与えた際に最大の妨害効果(strongest disturbance)があること、そして識別学習をした指と対応する位置からの距離に応じて干渉刺激による効果が低減することと同様の関係にあることがわかる。

結論

  • 結論として、シンプルな触覚識別課題を対象とした場合でさえ、体性感覚の刺激に関する半球間の処理が重要な特性であるという証拠が積み上げられつつある。さらに最も興味深いことには、この交互作用は、体性感覚野の情報処理を行う初期段階でみられる体性感覚局在性に基づく構造原理に従属している点である。

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Last-modified: 2014-09-15 (月) 00:08:56 (1165d)